大学一年生になりました。

最近、めっきりすっかりご無沙汰しておりましたが、西田は元気です。
色々ハードなスケジュールだった割には。


ご報告が随分と遅れましたが、 九月にドイツ中部のThüringen(テューリンゲン)州の州都、Erfurt(エアフルト)と言う街に引っ越しました。


今回の大学受験、三校ほど受験しまして見事三校とも受かったのは良いのですが、それぞれ少しずつ微妙に専攻が違うので長いこと悩んでいました。
が。ついにエアフルトに決めたわけです。

この三校の学科は一応「文化財の修復・保存科」なのですが、各校、その中でも細かく専攻が分かれています。例えば、絵画でも「壁画」「フレスコ画」「ガラス絵画」etcと言った具合に。
勿論、「楽器」が専攻の学校もあり、ヨーロッパでは今のところ一校だと思われますが、数年前にスイスの首都ベルンに新設されています。が、懐問題がメインで断念。(スイス人であれば国からの援助があるみたい)

それ以前に、楽器のみの専攻では就職が厳しいのが現実。
(楽器専門で博物館に所属しているのは、ヨーロッパだと15、6人ほど。フリーランスは除く。日本だと皆無。(「修理」と「修復」の概念が違う))

元々、希望する人数も少ないので、ドイツ国内には楽器専攻はない。私の研修先の担当者達は大体、「木製文化財」を専攻していた。(元オルガン製作者だったこともあって)
私もこれまでそのつもりでやってきましたが、現役で活躍している人たちに話を聞くと、いくつかの問題点が見えてきた。

一般的なものとしては、

  • 木製文化財専攻の人は結構いるので、ちょっとマーケット上溢れ気味。(絵画は言うまでもなく)
  • 一時期は紙製文化財(本など)の需要があったけど、私が卒業する頃はどうだろう?
  • 今後、必要性がありそう(現在人手不足)なのは、モダンな素材(合成樹脂など)の専門家。



楽器だけでは色々な可能性を狭めてしまう可能性があったので、元々関連性のある専攻(今までは木製文化財)とのコンビネーションで勉強していくつもりでしたが、上記の問題で今後自分が何を専攻すべきか、かなり迷い(と欲)が出始めたのは事実。


そこで猶予期間を設け、それぞれ三校少し専攻の違うもの、でも興味と関連性がありコンビネーションが可能な専攻を受験。

  • 「モダン技術文化財専攻」
    (大体19世紀以降のモダンな素材+からくりの多い文化財(時計、機械)などを扱う)
  • 「美術工芸品専攻」(色々扱う素材はピンキリ。基本、室内で使用するもの)
  • 「木製文化財専攻」(家具から教会の内部まで。ただし素材はオンリー木材)


どれも受かってしまったので、優柔不断が継続することに。。。(それが六月のブログ)


Händel-Hausの同僚達は「興味のあるとこいけばいいんだよー」と軽く言うけれど、どれも興味あるから困ってんだよ!!と少し頭を整理するのを手伝ってもらう。


どういった場所で働きたいのか。どういうことがやりたいのか。どの国で働きたいのか。


私の回答に今の業界の現状や可能性などを補足してくれ、私の決め手となった質問は、
「何をやりたくないのか」


私がやりたくないことは、私がいるのに楽器(や文化財)を状態を悪化させること。
勿論、一人でそれを阻止出来れば一番のことだけど、最悪のと気はせめて専門の人に見てもらえるまで現状を食い止める。


こんなに沢山の専攻がある理由は、どれも簡単にはエキスパートにはなれないと言うこと。
どこの博物館もそんなにお金持ちじゃないし、現場を知らない運営の人は修復家それぞれの専門性を良く知らないこと。
それでも生きていくには仕事をしないといけないこと。


鍵盤楽器であれば木材を多く使っているけれど、金属や織物、新しい素材も扱っている。
運良く楽器博物館に職を得ても、もし一人しかいなかったら?
もし楽器博物館でなくても、職の可能性のある他の博物館やフリーランスでのことも考えると・・・。


やりたいことが多すぎるので消去法となったけど、結論は自ずとしぼられることとなった。

きっと色んな素材を勉強することになるので大変だろうし、広く浅い知識になるかもしれないけれど、最低でも「私のやりたくないこと」を阻止出来る可能性が高いこと。
色んな専門を持った人と知り合いになれる可能性が高いこと。


そんな経緯で、美術工芸品を扱うエアフルトの大学に決断し、今月から十年ぶりくらいの大学生になりました。


ここで今まであまり興味なくて知らなかったような文化財も扱うだろうし、また新たに興味が出るかもしれない。
やっぱり木材を極めたいと思うかもしれない。



うん。そしたら、その時また考えよう。

優柔不断のまま、まずは三年間頑張ります。



スーパーダイジェスト 6月 その3

Halleから南西へ20kmほど行ったところにBad Lauchstädt(バート・ラウフシュテット)という小さな街がある。

街の名前に「Bad」がつくものは大抵Kurort(クアオルト・保養地)の場合が多い。(昔はそうだったけど、今は違うと言うパターンもある)
ここも例に漏れず、保養地の一つ。
ちょっと年齢層の高い人がツアーで来てる感じがするが、それだけがメインではない。


Goethe-Theater(ゲーテ劇場)と呼ばれる、かの有名なゲーテがワイマール劇場トップディレクターの時に買い取り、夏シーズンに定期的に演劇が催されそう。(昔の貴族は夏の避暑にこう言う保養地に訪れる)
ただ劇場の設備に不満足だったゲーテが、宮廷建築家とかの協力を得て建直したものが、オリジナル(しかも現役!)でこの街に残っている。


ゲーテ時代のなので、舞台の大きさも客席の大きさも非常にコンパクト。
(狭いながらも、ちゃんとオケピもある)

しかし、ここの舞台装置はすごい。
まず、これ。舞台上の四角い切り抜き。
現代じゃ割と普通だけど。上下可動式の登場装置。


しかし、勿論ここはゲーテ劇場。1800年頃の代物ですから、床下は・・・・

人力!!!




勿論、シーンはずっと1つの場面じゃつまらない。けれど、シーンごとに暗幕降ろして総入れ替えしてたら雰囲気ぶちこわし!
でもさすが。舞台際を見るとスライド式で、3シーン背景早変わり!


しかし、勿論ここは(以下略)
床下ではこんな努力が行われている。




舞台装置もすごいけど、入り口にあるチケット販売窓口も工夫がされている。
1800年代当時はTaler(ターラー)と言う単位のお金が流通していたが、3つのコインが素早く分けやすく、チケットが買いやすい。




勿論今はユーロですから、活用さているかは分かりませんが。




ここはヘンデル音楽祭の際、オペラ上映をしています。ちょっと公共交通機関は不便なんで、ハレの中心部からシャトルバスに乗って見に行くんですが、さすがに小さな劇場なんで、毎年気がついた時にはチケットが完売してます。
私は去年も今年もアウトでした。(基本館内がヘンデル音楽祭仕様になり始めてから動き出すので)


興味がある方はチケット販売開始時期、要チェックです!
もちろん、それ以外の時期も何かしら上映してます。→Goethe-Theater



今回は例のごとく金魚の糞でついてきてたのですが、思いのほか裏方さんも愉快な人が多くて、踊ってて良いよーなんて言われても・・・

でも200年前でもこのクオリティ。舞台装置も含み、修復・保存しつつも大事に使われている感じがした。




閑話休題:ご近所さん

通勤は基本自転車(子供用)で、いつも中庭の奥にある車庫もどきに停めてあるのだが、最近中庭に続く通路の扉に「ドア閉めて!!(可能な限り)」の張り紙が。。。



え、何なの・・・面倒くさいなー。



と思っていたけど、最近理由発覚!!



ナルホド!!




可愛いご近所さん(親子)も越してきてたらしい!



スーパーダイジェスト 6月 その2

ハレ大聖堂 Dom zu Halle


「大聖堂」と言う名前のつくものは基本、ある一定の役職の宗教家(司教とか)が常駐しているものなんですが、ここの場合はそう言う人はおらず、この辺地区を治めていた権力者(枢機卿)がこの教会の横に住居の一つを建てたので、そう言う名前になったそう。
マルティン・ルターはこの近辺出身で尚かつ活躍もしたこともあって、北ドイツ、東ドイツはプロテスタントが主流。(州の祝日もプロテスタントでのほう)
元々Domと言う名前自体カトリックで建設当時はカトリックだったこともあってそのままですが、そのルターの宗教改革もあってこの大聖堂はプロテスタントです。





ここのオルガンは修復のための寄付を募ってます。


もちろん、ここでもヘンデル音楽祭で毎年コンサートをやっています。(街の至る教会やコンサートホール、劇場などが使われる)
今年は2年ぶりにきた指揮者でガンビストのJordi Savall(ジョルディ・サヴァール)と彼のオケ。
ボヘーと教会の大聖堂について話を聞いていたら、ゲネプロ準備でやって来たサヴァールと遭遇。


裏返った声で「ハロー」と声をかけた小さいアジア人はかなり怪しかったと思われる。。。



スーパーダイジェスト 6月 その1

毎年HalleではHändel-Festspiele(ヘンデル音楽祭)が、隣の街LeipzigのBach-Fest(バッハ音楽祭)の前に行われる。

バッハ音楽祭で必ず「h-moll Messe(ミサ曲 ロ短調)」が演奏されるように、ヘンデル音楽祭も必ず演奏される曲目「Messiah(メサイア)」がある。
多分そんなに音楽好きでなくても、大抵小学校か中学校の時の音楽の授業で耳にしたことがあると思うけど、あの「ハレルヤ」の含まれているオラトリオ。



演奏家が持ち込みでない限り、ヘンデル音楽祭で使用される楽器はヘンデル・ハウスで貸し出し、調律も行います。


一応、調律だったり運搬だったりの予定は組まれているんだけど、予定通りに行くことは稀。
それ以外にも連日、博物館の方は世界各国からやって来たお客さんで大わらわ。
つまり2週間くらいは、うちの工房はカオスで通常通りなのは私だけ。



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そのメインのメサイアに使用する小さいポジティブオルガンの調律は一人でも出来るんだけど、あっち(鍵盤側)こっち(パイプ側)の移動が面倒なのと、膝が痛いってことで調律のお手伝い。



オルガン調律中(動画)
「weiter」と次の音へのかけ声がかかり、慌てて撮影終了。



Marktkirche(マルクトキルヒェ)には主オルガンと呼ばれる大きなオルガンと、コーラス用のオルガンがある。

今メインで使われているHauptorgel(主オルガン)。



Chororgel(コーラス用オルガン)である1664年、Reichel(ライヒェル)作のオルガン。

このオルガンは若きヘンデルも弾いたことがあると言う代物。音は出るらしいけど現役ではありません。
このオルガンは当時のの教会の信者さん(有名な7家族)だけの寄付だけで購入したそう。と言うことで、パイプの下の8つのシールドは、7家族の家紋と街のシンボルが装飾されている。
当時としては結構なお値段なんだけど、それを7家族だけで払いきれてる当時の教会の権力を感じます・・・。ブルブル。




そして私は調律手伝いのご褒美にメサイアのDienstkarte(関係者用ののチケット)をゲット。




こんな仕事でチケットもらえるのなら、いつでもウェルカム!!



スーパーダイジェスト 5月 その4

ロベルト・シューマンの生まれ故郷、Zwickau(ツヴィッカウ)に行く。


いや、随分前から行こう行こうと思ってたのですよ。Stein(シュタイン)のハンマーフリューゲルもあるし。
でもね、意外に日帰り出来る距離にあると、人間腰が重くなってしまうのね。
シューマン・ハウスは逃げないし。




んが。ついに重い腰をあげる時が来た。





友人のハンドボーラー(当時、ブンデスリーガ女子2部所属)のツヴィッカウでのホーム戦、およびシーズン最後の試合に加え、2部での活躍最後と言うことで、待った無し。
見たい見たい、応援いくよと言っておきながら、いっつも仕事の関係だったり用事で果たせてなかった約束がついに実現・・・!



相手が2部1位と言うことで、ドキドキハラハラしてたけど、なんと勝利!
みんな(選手も観客も)すごかったわー。
基本、初めて見る競技な上、えらい近くで見るもんなんで、ボールが観客席方面にパスされると「ヒィ!」と言いながら目をつぶるわ、あんまり速い速度で飛んでくもんで歓声でゴールしたことに気づくわ。。。
こっちでもドキドキハラハラ!


観客は地元密着型なんで、すごいの一言。
熱き応援団はアウェイでも選手の応援に行くが、やはり、ホームのサポート度は違う。


ツヴィッカウでの活躍は終わってしまったけど、1部での活躍期待してるぜ!!
(ハンドボールは俄ファンですが、推メンはUchibayashiです)



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そして、しっかり趣味の方も堪能。


シューマン・ハウス
ライプチヒにも同名の博物館がありますが、そっちは結婚後の新居で、ツヴィッカウの方は生家の方。


シューマン(とクララ(奥さん))縁の楽器、手紙その他諸々が展示されてます。
印象深かったのは、2人がまだ付合い始めの頃の「初デート(あれ、初チューだったか?)のあとにクララが送った自身の髪」。現代だったら手紙もレアでしょうが、髪なんて送られるとちょっとビックリだよね!でもその当時は分身として大事にしてたんだなー、と。うーん、ロマン!
あとはクララが子供達に出したシューマンの死を知らせる手紙。ちょっと涙チョチョ切れそうだった。。。。

楽器も1階のホールにコンサート用のグランドも揃えてますが、2階の展示室にもいくつか置かれてます。


1859年製のウィーン式アクションのベーゼンドルファー(Bösendorfer、Wienermechanik)、



1840年頃のドレスデンのピアノ会社ローゼンクランツ(Rosenkranz)のターフェルクラヴィーア(Tafelklavier)



1860年代製ドレスデンのピアノ会社ヴィーク(Wieck)のグランドと1904年頃に作られたペダル鍵盤(Pedalklatur)


監視のおばちゃんと仲良くなって、なかも少し見せてもらえました。
アメリカだったかな、同じようなペダル鍵盤があるらしいけど、弾けるのはここだけらしくCD録音もされてるようです。
弾いても良いよ、と言われ「ピアノは調律出来るけど弾けないんだよね・・・」言い訳したけど、ちょっと触っときゃ良かったと今更後悔。。。

ちなみに、クララの旧姓がこのピアノメーカーと同じWieckなんだけど、その関連性は一切書かれてないんで、多分他人?クララ自身はライプチヒ生まれだし、ドレスデンは150Kmくらい離れてるけど、同じザクセン内なので遠縁もあり得なくはないけれど。。。

写真で分かるようにめっちゃ逆光で、窓際に置かれているのですごく心配です。(外装も中身も光や温度に敏感なので)
特に近年「修復」(個人的に含みがあります)されているようなんで、もうちょっと気をつけて欲しいな、、、



そしてお待ちかね、1825年頃のシュタイン(Stein)のハンマーフリューゲル(Hammerflügel)

この部屋は進入禁止となっております。
この部屋でシューマンが生まれたらしく、この部屋に本当に彼の家族が当時使っていた机や家具が置かれてます。
このハンマーフリューゲルはクララが使っていたものと紹介されています。

※業界情報ですが、実際は同じ時期に作られた同じモデル。





思ってた以上に資料だけじゃなく楽器も多く、個人的に楽しめました。


結構日本人も来るのか、さり気なく案内で日本のサブカル・漫画でシューマンの生涯書かれてます!アピールや、本も置かれてました。



スーパーダイジェスト 5月 その2

入試中だったけど息抜きも兼ねてHalleの動物園へ。


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着いた時、ちょうど彼らのお昼時でした。(生肉の食事は週1で見れます)

ワイルドだぜ〜?
(本当は動画もあるんだけど重過ぎてブログに載せれませんでした)





ん?何か疾走するものが。。。

この春産まれたばかりの子豚でした。

しかし何だか見覚えのある背中・・・。懐かしい、この丸さは・・・

クミコ・・・?!




なんちゃってカメラマン西田が、調子に乗りそうなナイスショット!




あまりサービス精神のない子も居ます。




そんな精神なくったって、存在感のある方も・・・

流石の貫禄です。



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小高い山にある動物園なだけに、足はクタクタ。
(ストレス発散と言うよりは、ハシャギ過ぎた。。。)


でも最後の最後まで大興奮!


お腹いっぱいになったら眠くなるよねー!

閉園間際まで、がっつり楽しかった!


動物園、意外にハマるかも。



スーパーダイジェスト 5月 その1

バウハウスで有名なDessau(デッサウ)と言う街の隣街にSchloß Wörlitz(ベルリッツ城)と言うところがある。

ここの広大な庭園は世界遺産でもある。


観光じゃありません。
が。私の研修担当の仕事の関係でくっついて行きました。
結果、城内様々な特権でウロウロ出来、ほくほく。


残念ながら天気はすごく悪かったので、世界遺産の庭園はほとんど見れなかったけど、いつかリベンジ。

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コンサートの調律(の金魚の糞)で入ったお城はちょうど修復中だけど、大部分が終わりかけているので勿論一般の方も見学出来る。

その日に使われる4本ペダルのハンマーフリューゲル(ピアノの前身)はこのお城の主であったアンハルト・デッサウ候(何代目か忘れた)がウィーンの製作者に注文し配達させ、本当に使っていたもので、お城が廃墟になった時もそのまま放置されていたらしい。ちゃんと請求書とかが残っているから驚き。
意外にお城は楽器の倉庫代わりとしては温度・湿度にも適しているので、このハンマーフリューゲルはかなりいい状態で、演奏可能。

他にももう1台、ウィーン式の5本足ハンマーフリューゲルがあるが、こっちはいつからあるのかは不明。
こちらは音は鳴るけど、演奏には耐えれるか微妙。お城の中の音楽室に展示されてます。



私が行った日がちょうどコンサートのオープニングセレモニーで、大盛況。





私もおこぼれにあずかって、後ろの角っこに座らせてもらい、休憩中に振る舞われたシャンパンをここぞとばかりにがぶ飲む。イヤ、その日は本当に寒かった・・・からさ、アルコールで温めないと・・・!汗


ハンマーフリューゲルの演奏は微妙でしたが、歌とバロックリコーダーの演奏はとても綺麗でした。


このお城については色々と聞いたので、次の機会に詳しく。




追記;コンサート

ビーバーネタを書いたあとにビーバーを書くのはわざとではないんですが。
(ビーバー違いです)


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Heinrich Ignaz Franz von Biber 1644−1704
(ハインリヒ・イグナーツ・フランツ・フォン・ビーバー)
かの有名なバッハと同じくバロック時代に活躍した、チェコ(当時のボヘミア)生まれの作曲家でヴァイオリニスト。
しかしバッハよりも40年ほど前に産まれているし、活躍したのはオーストリア・ザルツブルク。


先日聞いたコンサートはこのビーバー作曲の「Rosenkranz-Sonaten」(ロザリオのソナタ)をヘンデル・ハウス所蔵のヴァイオリンを使って、Theorbe(テオルボ/ボディはリュートっぽいけどネックが凄く長い通奏低音楽器)とチェンバロとポジティフ・オルガンとのもの。
Händel-Haus では毎回ではないけれど、時々所蔵楽器をコンサート+解説付きで行っている。


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ヴァイオリンは楽器製作(現在は特に金管とアコーディオン)とウィンタースポーツで有名なザクセン州のKlingenthal (クリンゲンタール)と言うチェコとの国境沿いの街で、1781年、Friedrich Wilhelm Meisel(フリードリッヒ・ヴィルヘルム・マイセル)が製作したもの。


特記すべきことはこの楽器、オリジナルのネックとチューニングピンを持っていること。
ヴァイオリンはチョンバロほど改造や大きな進化もしていないので、オリジナル部分が多いと言える。
チェンバロはRavalement(ラヴァルマン・フランス語で改良・改造)という過去に作られた名器を良くも悪くも大改造(grand ravalement )だったり、ちょっと弄ったり(petit ravalement)と18世紀半ばにブームだった。


同じように18世紀末にチョンバロほどないにせよ、人は大きな音を求め、ヴァイオリンも改造されることがあった。
楽器を良く知らない人でも知っているような、ストラディヴァリもアマティもグァルネリのヴァイオリンも、大抵「駒」と呼ばれる楽器の中心に載っている(琴で言う「柱」)部品はオリジナルではない。むろん消耗しやすい弦も。(当時の主流は羊腸のガット弦)

大きな音量を求められると必然的に、駒の大きさ(高さ)を変え、弦を強いものにする。音域を広げたいならネック部分も取り替えることになり、張力が上がると言うことはチューニングピンも新しくしなければいけない。


と言ったような当時の風潮の中で、楽器のネックとチューニングピンがオリジナルと言うことは、かなり希少性が伺える。





ヴァイオリンという楽器には4本の弦が正面左側・低音からG線(ソ/g)・D線(レ/d1)・A線(ラ /a1)・E線(ミ/e2)と完全5度で張られている。

バロック時代まではこの基本的な調弦が共通しておらず、時々作曲家が曲によって任意の調弦の指示を書いている。
この調弦方法をScordatura(スコルダトゥーラ)と言い、調によって喜びや悲しみその他諸々を響き方で表してており、印象が変わる。
もちろん現代の調弦の仕方で楽譜を移調すれば、平均律なら異名同音として弾けるけど・・・微妙に違ってくる。
今回のコンサートはこのやり方を駆使した作品で、ヴァイオリニストはかなりのテクニックが必要。


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今回私の聞いた「Rosenkranz-Sonaten」(ロザリオのソナタ)は題名から分かるように、キリスト教での聖母マリアの生涯を受胎告知から、そしてキリストの受難・復活・戴冠までの15の場面の章に分け、最後にヴァイオリンの無伴奏曲で締められた、計16章の宗教曲になる。
そしてスコルダトゥーラは各章このような感じ。(Wikiからの転載)





上記15の場面は5章ずつ3つのGeheimnisse(神秘)に分けられる。
私はクリスチャンでないので若干アバウトになりますが、以下ドイツ語は当日もらったプログラムから、日本語訳はWikiから、太文字が今回の演奏したプログラムとなる。


    Freudenreiche Geheimnisse(喜びの神秘)

  1. Jesus, den du, o Jungfrau, vom Heiligen Geist empfangen hast.(聖母マリアの受胎告知)
  2. Jesus, den du, o Jungfrau, zu Elisabeth getragen hast.(聖母のエリザベト訪問)
  3. Jesus, den du, o Jungfrau, in Betlehem geboren hast.(主の誕生)
  4. Jesus, den du, o Jungfrau, im Tempel aufgeopfert hast.(聖母、主を神殿に奉献)
  5. Jesus, den du, o Jungfrau, im Tempel wiedergefunden hast. (神殿での主イエスの発見)


  6. Schmerzhafte Geheimnisse(苦しみの神秘)

  7. Jesus, der für uns Blut geschwitzt hat.(オリーヴ山での苦しみ)
  8. Jesus, der für uns gegeißelt worden ist. (鞭打ち)
  9. Jesus, der für uns mit Dornen gekrönt worden ist.(茨の冠)
  10. Jesus, der für uns das schwere Kreuz getragen hat.(十字架の道行き)
  11. Jesus, der für uns gekreuzigt worden ist.(十字架上での死去)


  12. Glorreiche Geheimnisse(栄えの神秘)

  13. Jesus, der von den Toten auferstanden ist. (主の復活)
  14. Jesus, der in den Himmel aufgefahren ist.(主の昇天)
  15. Jesus, der uns den Heiligen Geist gesandt hat.(聖霊降臨)
  16. Jesus, der dich, o Jungfrau, in den Himmel aufgenommen hat.(聖母の被昇天)
  17. Jesus, der dich, o Jungfrau, im Himmel gekrönt hat.(聖母の戴冠)



Schutzengel(守護天使)


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注)まさかこんな面白い話が聞けるとは思ってなかったんで、メモ無しの私のショボイ記憶力のみですので、多いに間違っているかも。


この楽譜が発見されたのは19世紀末ニュールンベルク(?とりあえずバイエルン)の公文書保管所で、20世紀初頭にビーバーの作品だと言うことが分かったは良いが、この全16章の曲の表紙が抜けており、宗教曲だが何のために作曲されたかは分かっていない。(特に最後の「守護天使」のみヴァイオリン独奏なので)
特徴的なのは各章の最初にその曲のモチーフとなる版画が添えられている。


デジタルライブラリへ
(クリックして行くとページがめくれ、オリジナルの譜面と版画が見れる)



今回、私が聞いた時には演奏されなかった(全部演奏するとCD2枚分)けど11章目の曲のスコルダトゥーラの指示は「真ん中の2本の弦を駒と駒とチューニングアジャスターでクロスさせること」。


どんな感じかと言うと、こんな感じ。(画像はWikiからの転載)





楽器としてこんなことして大丈夫なのかは分からない。
だが、色々なオタク もとい、専門家は調べた。
このクロスは十字架から来ている(ちょうど曲としてもイエスが復活するところ)、他にも各章の音符の数を数えたところ宗教的に関連した数字がでる(292とか97?うろ覚え過ぎて当たってないかも)とか、天文学者ケプラーの法則によって音符数が決められ云々・・・。


ちょっと突飛過ぎたのもあったりしたが、この「ロザリオのソナタ」の別名「ミステリー・ソナタ」。


謎の多いソナタだが、非常に魅力的。
あまりに調弦回数が多い、もしくは楽器をチェンジすることが多いので全曲演奏を1日ですることはなさそうなので、早速、iStoreで購入。。。
非常に良いです。


バ・ロッカー(バロック好き)にはお勧めです。






こんなにモリモリ書いておきながら、実はどっちのビーバーも全く関係ない内容の入試が来週末にあったりすると言う・・・。


何してんだ、自分。。。